Comparative Clinical Psychology

比較臨床心理学とは

文化・社会・制度という文脈を越えて、心理的苦悩の理解と心理支援の理論・実践を比較する研究分野です。

学術的定義

比較臨床心理学

社会的・文化的・制度的文脈の差異を分析の基軸に置き、こころの理解、心理的苦悩の意味づけ、心理支援の理論と実践、専門職制度、および倫理規範が、いかなる文脈において、どのように形成され、異なり、あるいは共通するかを組織的・比較的に検討する学問領域です。

比較臨床心理学は、望月宇が2011年に学術的視点として提唱・定義し、2013年の博士論文研究を通じて公表したものです。本学会は、この視点を研究者・実践者・学生による開かれた学術的検討を通して発展させることを目指します。

三つの比較軸

文化的文脈

苦悩や回復の意味、援助要請、家族・地域との関係を、複数の文化的文脈から比較します。

制度・専門職

心理職の資格、教育・訓練、職務、倫理、多職種連携、支援へのアクセスを比較します。

臨床理論・実践

心理療法、アセスメント、発達支援、地域支援などが、各文脈でどう適用・変容されるかを比較します。

隣接分野との関係

比較臨床心理学は、文化心理学、異文化間心理学、多文化カウンセリング、異文化コミュニケーションなどの成果を参照し、それらと対話しながら発展する領域です。他分野を排他的に区分するのではなく、次の点を特に重視します。

隣接分野共有する関心比較臨床心理学が特に重視する点
文化心理学文化と心の相互構成心理的苦悩、臨床実践、支援制度への含意
異文化間・比較文化心理学文化間の共通性と差異差異が心理支援、倫理、専門職制度にもつ意味
多文化カウンセリング文化的多様性に応答する支援実践に加えて、理論、制度、歴史的文脈を比較すること
異文化コミュニケーション異なる文化的背景をもつ人々の相互作用コミュニケーションと心理的苦悩・支援過程との接続
比較心理学複数の動物種を通じた心理・認知・行動の比較人の心理的苦悩、臨床心理学の理論と実践、心理支援、専門職制度および倫理を、文化的・社会的・制度的文脈から比較すること

比較心理学との違い

比較心理学が主として複数の動物種を通じて心理・認知・行動を検討するのに対し、比較臨床心理学は、人の心理的苦悩と心理支援を中心に、臨床理論・実践、専門職制度、倫理および支援へのアクセスが、文化・社会・制度によってどのように異なり、又は共通するかを検討します。名称に「比較」を含みますが、研究対象、目的および実践との接続を異にします。

研究対象

保健医療・福祉

精神保健、発達・障害支援、リハビリテーション、家族支援、地域連携。

教育・産業・司法

学校・大学、職場、司法・矯正、被害者支援などにおける心理支援。

多文化・国際領域

移住、留学、国際結婚、多言語支援、専門職制度、国際共同研究。

研究方法

研究課題に応じて、次の方法を単独または組み合わせて用います。比較の単位、翻訳の等価性、研究参加者の文化的背景、研究倫理を明示することが重要です。

代表的な研究課題

同じ苦悩は同じように理解されるか

文化、家族、宗教、医療制度によって、症状の表現、意味づけ、援助要請はどう異なるか。

支援方法は別の社会でも機能するか

ある地域で成立した心理療法や支援モデルを移す際、何を維持し、何を調整すべきか。

専門職制度は実践をどう形づくるか

資格、養成、権限、倫理、多職種連携の違いは支援の内容とアクセスにどう影響するか。

比較は誰の利益になるか

文化の固定化や優劣化を避け、研究参加者と地域社会に還元できる比較研究をどう設計するか。

学術的使用と学会活動

「比較臨床心理学」の名称は、2013年に九州大学で公表された博士論文題目に用いられています。比較臨床心理学会は、この学術的経緯を基礎に、研究・教育、心理支援に関する講演・研修、研究会、国際交流および学術出版を行っています。

2013年の博士論文

「中国と日本の中学生におけるストレッサー、ストレス反応及びストレスマネジメントに関する比較臨床心理学的研究」として、九州大学の学術情報に収録されています。

九州大学の書誌情報CiNii Research

学術誌『比較臨床心理学研究』

比較臨床心理学会が発行する学術誌です。J-STAGEでは発行機関、誌名、分野及びOnline ISSN 2760-2575が公開されています。

J-STAGEの発行機関情報

望月宇による研究

異文化適応と心理支援を扱う研究を学会誌で公開し、文化的背景を踏まえた心理支援の実践的検討を継続しています。

J-STAGEで論文を見る

研究・教育・研修

異文化適応、心理健康、臨床動作法、多文化心理支援等を扱う講演・体験活動、研究会及び学術交流を、学会の研究枠組みに基づいて実施しています。

研究会・学術交流を見る活動紹介を見る

提唱者と学会の役割

本分野の提唱・定義に関する学術的経緯と、複数の研究者・実践者・学生が参加する学会活動を区別しながら、ともに明確に示します。